Athletic Republic of Boulder Diary
アスリート的コロラド州ボルダー滞在記

Firecracker 50

今夏のMTBチャレンジを死後の世界になぞらえるなら、Leadiville 100の試金石となるFirecracker 50は中陰と言ったところだろうか。この日の努力次第で、Leadvilleは地獄にも天国にもなる…いや、どう走ったってLeadvilleが天国になるわけはないけれど。

実はきちんとマウンテンバイクに乗るのはこのレースで今年3回目、今まで50マイル連続でマウンテンバイクに乗ったこともないし、今回のレースは完全に未知への挑戦だった。どのくらいの時間がかかるかすら見当も付かなかったけど、去年出場した家主Paulが後半つぶれて5時間ちょうどだったのを見て、6時間切れれば上々かなという見通しでレースに臨んだ。

このレースはBreckenridgeの中心部からスタートするのだけど、最初の道を曲がるまでは先導バイクに率いられてゆっくりと街中をパレードする。沿道をギャラリーが埋め尽くしていて、なかなか粋な演出だ。先導バイクがよけてからが本当のスタートで、何を血迷ったのか若造がいきなりダッシュをかけている。このくらいの年になるとそんなのに惑わされないくらい老獪になっているから、自分のペースを保って抜かれるにまかせていると、案の定ダッシュをかけた連中の一部は5分ももたずにずるずると落ちてきた。ここ数年、エンデュランスのレースに臨むときはかなりの部分を経験に頼ってペースをコントロールしている。

最初の5マイルほどは延々とロードバイクでも走れそうな普通の道路が続き、そこからトレイルに入るとようやくクロスカントリーっぽくなる。この区間は前に他の選手が数珠繋ぎになっていて、自分のペースで乗るのは難しい。登りのペースはそんなに速くなかったのでそこそこ楽に付いて行けたけど、問題は下り。ちょっとテクニカルなダウンヒルになると全く追いつけない。追いつけないどころか、走る障害物と化してしまう。この後、登りで追い抜き下りで抜かれるというのを延々と繰り返すことになる…実際、先にスタートしたHIROさんが登りでバイクを押しているところに追いつき、「押しちゃだめですよ」と言って抜いた数分後、下りで「遅いぞ」と言われてぶち抜かれる一幕もあった。

それにしてもこのコースの下りは手ごわい。かなりの急斜面かつ路面もルースなので全然コントロールが利かない。ある程度路面がしっかりしているところは逆にバンピーで、バイクが壊れるんじゃないかと思うほど。そんな悪路をみんなジェットコースターのように下っていく。自分があの域に達する日は…永遠に訪れまい。下りでは誰一人として抜けなかった。

第2・第3エイドステーションの間には一部ガレ場の登りがあって、そこでは長くバイクを押す羽目になった。押すのは慣れてるつもりだったけど、実際に足場の緩いところでバイクを押してみると、乗るのと同じくらい体力を消耗することに気づいた。押した後にまた乗ってバイクをこいでみると、一気に脚が回らなくなる。足がもつ限り、少々タフでも乗れるところは乗った方が得策のようだ。

そんなこんなで1周目のタイムは2時間49分、後半つぶれなければ6時間切りはできるかなというタイムだった。この時点ではまだ比較的人間らしい表情をしている。

1 lap to go


そして、2周目。最初の舗装路でバイクを止めて道端で軽量化するとだいぶ調子がよくなって、するすると回りの人を抜けるようになった。どうにも自分はゆるい登りが一番得意らしい。が、それも束の間、未舗装路の区間に入るとまた足が回らなくなってきて抜かれはじめ、トレイルに入った途端ついに右足のハムストリングが攣ってストップを余儀なくされた。一回足が攣ってしまうと再発を恐れてその後プッシュできなくなってしまい、1周目でHIROさんに「押しちゃだめですよ」と言った坂で自分がバイクを押していたことを、ここに告白する。

それにしても2周目は果てしなく長く感じる。マウンテンバイクのきついところは下りでも休めないことで、特に今回のようなコースだと下りで体を浮かせて振動を吸収しないといけないので、体を支える足も腕も下りで消耗していく。長いレースにはそこそこ慣れているつもりではあったけどこれにはかなり参ってしまい、「MTBは自分の競技じゃない」とマイナス思考が頭のなかで膨らんでいった。

2回目に足を攣ったのは、そんなマイナス思考がモチベーションを覆い隠しつつあった矢先のことだった。1回目と同じ部分だが症状はもっと悪く、苦痛と怒りに耐えかねて手元のバイクを放り投げてしまう。さらにこの場所には蚊がぶんぶん飛んでいて、動けない人間の生き血をすするのだ。発狂する前に動かなければと思い、右足をひきずりながら左足だけでバイクを押して少しでも蚊から逃れようとするも、奴らは離れることを知らない。こういう時だけは蚊を振り切れる下りがうらやましくなる。幸い錯乱状態に陥る前に右足は回復して、なんとかレースに復帰できた。

この後嫌いなダウンヒルを下り終えるとしばらくジープロードの登りが続く区間になり、ようやく完走できそうな気がしてきた。最後の登りを終えてあとはフィニッシュまで下るだけ…と思った矢先、右目のコンタクトレンズが飛んだ。3日前のLeadville試走でも同じことがあって、そのときは真水がボトルに入っていて何とかその場で付け直せたのだけど、今回は真水もなく手も砂と汗とジェルにまみれてこの世のものとは思えない汚さだったので、その場でもう一度はめるのは不可能だった。唯一の救いは、ここからフィニッシュまでそう遠くないということだけ。

裸眼視力は0.1もないので、両目を開けるよりは右目をつぶっていた方が楽だったけど、片目で坂を下るのは非常に危険だ。遠近感がないのでちょっとした段差にも対処ができない。安全第一でのろのろと下っていると“Are you all right?”と声を掛けられることもあったけど、全然all rightじゃない。ジープロードからトレイルに入ると隻眼での下りはますます難しくなり、後ろから人の気配を感じたらとっとと止まって先に行かせ、人の列が途切れたらよろよろと下るというのを繰り返す。そのうちに視界に入らないハンドルの右端が木に当たってこけてしまい、再度ブチ切れて、声にならない叫びとともにバイクを蹴り上げた。ここまで堕ちると動物以下だ。たまたま後ろにいた選手は狂ったかと思ったことだろう。このままバイクを捨てて森の中に消えて野生児にでもなりそうな勢いだったけど、深呼吸してフィニッシュが目前だということを思い出し、人間に戻ってよろよろと坂を下り続けた。どんなレースにも必ず終わりがあるもんだ。のろのろ運転のおかげで足はすっかり回復していたので、最後の平坦部だけ50mほど無意味なダッシュでフィニッシュ。時間は目標を大幅に超える6時間19分。

Finish

この写真だけ見ると1周目とあまり変わらないように見えるかもしれないけど、クローズアップでは泥とジェルにまみれて般若のような顔になっている。レース後の顔は当ブログの倫理規定により掲載できないことをご了承ください。

ちなみに師匠は自分より2時間早くフィニッシュ、ライバルJさんには2周目かなり追い上げられたようで、15分後にはフィニッシュしていた。もう一回足が攣っていたら抜かれていたことだろう。

2 humans and a beast (and one kid)

Jさん・師匠・HIROさんの愛娘リサと一緒に撮ったレース後の写真、ヒトとは思えない自分の目つきを見て、よほど目のところを黒く塗りつぶそうかと思った。


今回のレースを一言で言えば、久しぶりに自分の経験の範囲を超えた体験をした。レース中に自分のコントロールが利かなくなるなんて、いつ以来のことだろう。トライアスロンのランでつぶれたら歩けばいいけど、マウンテンバイクではそういうわけにもいかない。「乗る」しか選択肢がない上に登りでも下りでも全く気が抜けないので、ひどく神経をすり減らしたような気がする。なんて競技に手を染めてしまったんだろう。

スピードのことを言えば、今回は下りでのロスがあまりにも多かった。下りだけで20分以上は損をしているはずだ。そのくらい下りでのテクニック不足は致命的だった。どうもこればかりは場数を踏んで (リスクも背負って) 慣れるしかないようだ。

最後に、

6:19 × 2 = 12:38 > 12:00

はたして100miで12時間は切れるんだろうか?

Wed Jul 04 22:07:00 MST 2007 by k - Category: Race

Comments

ユウキ wrote:

お疲れ!よく3度目のMTBライドでフィニッシュしたよ。下りは経験を積めばもっといけるはず!そしてどんどん楽しくなるよ~!そして、バイクはいたわってあげるように!

Fri Jul 06 10:22:11 MST 2007

k wrote:

やっぱり何事も準備は大切。
今までの経験に驕って、地道な努力をすっ飛ばして
いきなりこんなレースに出たのは無謀でした。

バイクに当たったのも申し訳ないなー、と反省してます。

Fri Jul 06 19:36:04 MST 2007

ゆっこぽん wrote:

レースお疲れ様でした! 
いや~でも、すさまじいレース展開ですね。。。
わたしだったら最初の痙攣で、いい理由が出来たとばかりにリタイヤしそうだけど、最後まで諦めないその精神力、流石です!
Leadville100はこの2倍かぁ・・・・
どうか皆さん、生きて帰ってくださいね!

Mon Jul 09 09:53:34 MST 2007

k wrote:

6時間動き続けるエンデュランスはかろうじて残っていたので
完走だけはなんとかできましたが、足が攣ったのは練習が足りないから、
ブチ切れたのは精神力が足りないからで自業自得でした。

Leadvilleはもう少し楽しく乗りたいなー、と思ってます。

Mon Jul 09 12:59:17 MST 2007

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